ベトナム 紀行

 生まれてこの方、一度も日本から出たことがなかったのだが、唐突に今回の旅
行への参加を決めた。お話を聞いた時点でのメンバーとなら絶対に面白い旅にな
ると思ったこと、上司にダメ元で休暇の事を聴いてみたらすんなりと承諾された
こと、そんな勢いに任せての決断だった。何もかもが未知で不安が大きかったけ
れど、ホーチミンの方々の合気道は硬くないこと、畑中さんのような動きをする
といったことも聞いて、心中の半分は期待が占めていた。
 
 ベトナムに着けば、まずは暑さに辟易し、次に道場の方々の歓待ぶりに驚き、
現地の交通事情に戸惑った(バイクが車や他のバイクの隙間を自在に走り抜け、
歩行者はそんな流れの切れ間を読んで堂々と道を横切っていく! 乗り物には人
が乗れるだけ乗って良しで、交通ルールなんて言葉はきっと形骸化)。
 
 が、着くなりじきに稽古。稽古が始まってしまえば抱えていた様々な不安や緊
張は一瞬のうちに消え失せて、楽しさと爽快感とに埋め尽くされていたように思
う。中尾先生が彼らについて上述のような形容をされたことも、一目見てすぐに
理解できた。この旅は間違いなく楽しくなると確信できた瞬間でもあった。食事
会でもとても賑やかで、お酒を飲めない私は飲み物には少し困ったけれど食べ物
はどれも美味しく、いずれも楽しい時間となった。一つ驚いたのが、店内への持
ち込みの規制は何一つないということ。お菓子、お酒、果物何でもござれで、そ
の寛容ぶりには感心した(おかげで、手土産にしたカン●リーマァムをホーチミ
ンの方がいたく気に入った姿を目に出来たので嬉しかった。やっぱりカントリー
マ●ムは鉄板!)。
 
 稽古以外にも、皆さんには観光などにも時間を割いて付き合って頂き、とても
良くして頂いた。なのに途中、ちょっとした接触で負傷してしまい、責任者の方
や相手の方、他の方々にご迷惑をおかけし、大事な稽古時間をふいにさせてしま
ったことが唯一と言っていい心残りとなっている。
 
 最終日、子供クラスの稽古への参加のみとなったが、子供たちもとても上手で
先生のお手本をちゃんと見倣い、熱心で、かつ楽しんで稽古に取り組んでいて、
ただただ舌を巻いた。また、最後に行われた道場を代表しての4名の方々の演武
は、本当に素晴らしかった。気負いや見栄えといった無駄な力みがなく、動きが
自然で淀みなく、とても美しかった。この最近にないほど感動して、間違いなく
私は彼らの合気道に魅了されたのだと思う。稽古後、バイクの後ろに乗せてもら
って夜の街を走ったことや、食事会は今まで以上の盛り上がりを見せ、途中、幾
度も行われた乾杯や写真の大撮影会となったことも忘れられない思い出の一つと
なった。
 
 この4日間、日本では決してできない経験を数々させて頂き、共に行ったせい
ぶ館の方々の意外な一面も垣間見ることもでき、行く前に抱いていた期待など軽
く凌駕して本当に素晴らしい時を過ごすことができた。とても優しい人たちと、
その素敵な合気道に触れられて、あっと言う間に過ぎたとも感じるし、とても長
かったとも感じる、豊かで不思議な時間であった。こんな素晴らしい時間を与え
てくれた、共に渡ったせいぶ館の仲間たちに、休暇を与えてくれた職場の同僚た
ちに、そしてホーチミンの道場の方々に、心から感謝申し上げたい。本当に、あ
りがとうございました。

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