浜崎さんと知り合って30年、最後に稽古をご一緒したのはコロナで道場が閉鎖される前に行われた2月の昇段祝いの時だったように思います。藤井現道場長と交代で、お二人に私は激しく畳に投げつけられました。まるで、まだ、ひよっこだねえと言わんばかりに手玉に取られ、格の違いを見せつけられました。そんな中でも、お二人とも私の投げ技に対して受けもきちんと取ってくださり、上級者はかくあるべきと示してくださったように思いました。
浜崎さんの技の凄さ、気の導き方は皆さんがおっしゃる通りですが、厳しさの中にも愛情が溢れており、逆に説明しながら道場内を回られる時もにこやかな中にも武道としての厳しさを常に併せもたれ、合気道を学ぶ先人としての姿を示してこられたように思います。稽古回数は多くはないのにあのような説得力のある技のきれや動きができたのは、若い頃に相当お鍛えになられたか、道場外での稽古や理合いの実践によるものか、天賦の才であったのかはわかりません。これら全てを合わせもたれていたようにも思えます。開祖を直接知る、数少ない大切な先人である浜崎さんが旅立たれたことはとても大きな喪失ですが、あらかじめ、亡くなった後のご挨拶の文章まで準備なさって、病院退院翌日に天に召されるという格好のよさに驚きを隠せません。「少し」とはにかみながら指導を始める浜崎さんがもういらっしゃらないのは至極残念でなりませんが、本当にありがとうございました。
浜崎さんのエピソードを一つ。道主を迎えてのせいぶ館50周年記念祝賀会の際に、早めにお帰りになる道主をお見送りするため、ホテル前に出たところ、浜崎さんの肩に太々しくぶつかってきた男性が何も言わずに通り過ぎ去りました。お酒が入っていたこともあったのか、その男性に「やるんか」と言いながら追いかけ始めて、周りに制されたことがありました。普段、穏やかな口調の浜崎さんのまた違う激しい一面を垣間見た瞬間で、うまく言えませんが、なんとなく微笑ましかったことを思い出しました。
ご冥福を心からお祈りいたします。
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