濱崎先生との思い出
私が合気道を始めたのは、今から五十年前、精武館でした。現在の「せいぶ館」の壁には、当時の道場名板が今も飾られています。
それを見るたびに、初めて道場の畳に足を踏み入れた日のことが、昨日のことのように思い出されます。
当時の精武館は剣道場が主に使われており、曜日は確か火曜日だったと思います。
稽古の前後には畳の上げ下ろしがあり、それも稽古の一部のように感じていました。土曜日は夕方から、日曜日は午前十時頃から稽古があり、
終わる時間は決まっておらず、正午を過ぎることもあれば、十三時を回ることもありました。昇段・昇級の審査も、年に一度あるかどうか分からないような時代でした。
指導は、横田先生と濱崎先生が中心だったと記憶しています。
横田先生の四方投げはとにかく厳しく、受身が取れないほどで、恐ろしく痛い小手返しや、関節がきしむような二教を、何度も味わいました。今思えば、それもまた貴重な経験でした。
濱崎先生は、技の数こそ多くはありませんでしたが、その一つ一つが深く、忘れがたいものでした。
とくに「誘いの手」についての教えは、私の合気道人生の原点となっています。
合気道で最も大切なのは、相手に自然と手を取らせること。
その技術を、濱崎先生は身をもって教えてくださいました。
あの手の出し方、間の取り方、そして相手を導く感覚は、今も私の中に生き続けています。
これからは、濱崎先生から学んだこの教えを、後輩たちに伝えていくことが、自分に与えられた役目なのだと思っています。
濱崎先生、長年にわたるご指導に、心より感謝申し上げます。
どうか安らかにお眠りください。