Fw: 濱崎さん追悼作文sim
31年前、私が19歳だった頃のことです。精武館第二道場の夕方のクラスで、稽古
の終わり際になると、背広姿の濱崎さんが、いつの間にか道場の入り口に立って
おられることがよくありました。そして気がつけば、教えることが大好きな濱崎
さんらしく、自然とアドバイスが始まっていました。稽古が終わった後も、背広
のままでご指導くださいました。
「もっと手を伸ばして……」「腕はこうは動くけど、こうは動かんやろ……」
今思えば、合気道の基礎となる大切な部分は、この頃にしっかりと叩き込まれた
のだと思います。「誰も濱崎さんの技を受け継いでいない」と言わていますが、
形は違えど、その教えは確かに私の身体にしみ込んでいます。
震災後、現在のせいぶ館となり、ここで正式に濱崎さんのご指導を受ける機会が
できました。前に立って示される技は、道場が狭く感じるほどよく動かれ、演武
の際にはいつも杖を手にされ、その動きもまた非常にダイナミックでした。私が
初めてお会いした50代後半の頃から、コロナ前の80代に至るまで、その動きが衰
えることは一度もありませんでした。
昇級・昇段審査の講評はいつも辛口で、見本の技を御自身で示しながら説明され
ていました。もちろん私もその辛口指導を受け、あまり褒められた記憶はありま
せんが、たまに褒めていただけたときは、嬉しかったことを覚えています。
濱崎さんは気さくなお人柄で、私だけでなく、せいぶ館のメンバーみんなから愛
されていました。
最後に、濱崎さんのご冥福をお祈りするとともに、これまでご指導いただいたこ
と、そして気さくにお話しくださった数々の時間に、心より感謝申し上げます。